2024年、ノーベル平和賞の陰で。被爆二世裁判高裁敗訴
今年も色々ありました。被団協のノーベル平和賞受賞は非常に喜ばしいことです。しかし一方、被爆二世にとっては試練の年となりました。福岡高裁、広島高裁の両方で敗訴したためです。
今月13日の広島高裁での被爆二世裁判はテレビや新聞といったマスコミが大勢くるほど注目をあびていました。しかし裁判は開廷後3分にも満たない時間で裁判長から判決が言い渡されるというあっけないものでした。
このたびの判決は被爆のヒトへの遺伝的影響について動物実験などでの結果を当てはめることはできないという理由で、科学の知見を無視したものでした。原告から提出した遺伝的影響を示唆する研究を否定し、被告である国側が提出した遺伝的影響に批判的な研究を採用しているのです。
2021年の黒い雨判決で広島高裁は、原告は黒い雨による内部被曝により影響を受けるような事情にあったとしました。そして今回の二世裁判で広島高裁は被爆二世に対し「明確に否定されているとはいえない」といっています。黒い雨判決の理屈からいうと、明確に否定されていなければ二世は黒い雨の原告と同じ立場(みなし被爆者)なはずです。高裁判決は黒い雨と被爆二世の違いは被爆時にその場にいたかどうかというもので、科学的に遺伝する可能性があることを否定したものでした。原告の弁護団の主張は一貫して「被爆二世が被害を生じる可能性を否定できない。つまり被爆二世はみなし被爆者と同じ」ということです。
長崎も広島も、地裁、高裁の判決に対し共通していることは、被爆二世として常に健康不安、周囲からの差別を抱えながら生きてきたことを、判決に考慮していないということでした。一審でも二審でも証人として被爆二世は裁判にたち、陳述書を書いてきました。自らに起こった出来事を赤裸々に文章にしたためてきた証拠について判決は一切ふれることはありませんでした。報告集会の中で判決に対し二世が憤ったのはまさにこの点でした。原告が求めているのは損害賠償金ではなく、黒い雨の被ばく者同様に被爆者援護法の対象として国が認め援護してほしいということなのです。
弁護団は広島高裁の判決を不服として上告することをその場で決めました。これで長崎、広島の両方とも最高裁に判断をゆだねることになりました。最高裁になるといつ裁判が行われるのか、分かりにくいといいます。来年は被爆後80年です。一番年上の被爆二世は79歳になり後期高齢者です。最後まで被爆二世裁判の行方を注目していきます。
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