初の黒い雨地域拡大検討委員会が開かれました
今週の月曜日16日に東京で「第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会」の第1回目が行われました。タイトルだけでは何のことか分かりませんが、いわゆる黒い雨地域拡大のための検討会のことです。これは黒い雨裁判で原告全員が被爆者と認めたものを受け、国が開催しました。当日はネットで見ることができたため、私も拝聴させていただきました。
第1回目は幅広い観点から意見を求めるのが目的で気象やエネルギー工学といった分野の学識経験者が集められました。もちろん鎌田七男先生や日本被団協、広島市副市長なども参加され、被爆者の目線からの意見も出されました。様々な意見が出され、私が知らないことも多くありとても勉強になりました。今後は気象や土壌検査、カルテ分析、米国文献の収集など5つのワーキンググループに分かれ、引き続き検討を行う予定のようです。
検討会では過去に実施された放射線残量調査の結論に疑問を呈している委員がいました。「黒い雨が20キロ先で降っているのはありえないと採用されなかった。黒い雨はキノコ雲自体から降る雨、火災積乱雲からふる本当の黒い雨の2種があるが、30分以内に黒い雨がふるなんてありえないと結論された。きちんと討論されていれば確かなものが検証されるので、まだ結論は出てないのではないかと思っている」と新たな検証の必要性を訴えました。またこれまでの様々な調査研究結果を網羅的に調査してほしいという意見も出されました。
鎌田先生は黒い雨以外の放射性微粒子も問題にあげていました。「福島原発事故の場合、静岡まで出ている。原爆でも同じことがあるのではないか。雨以外の微粒子の検討もお願いしたい」と提起しました。加えて内部被曝にも注目しました。放射性物質の降下物には気象と土壌が重要であることが確認され、降下物の範囲内などは被爆者の手記をデータ化することで統計も可能ではないかという意見もでました。
さらに興味深い事実もありました。長崎ではホールボディカウンターで測定し被爆時の被曝線量を逆算していたのです。また長崎での被爆者健康手帳が交付される健康障害で精神疾患が含まれていたことは知りませんでした。しかし問題は広島では精神疾患が含まれていないことです。その理由は広島では精神的な健康についてデータとして出ていないというのが科学的証拠でした。国の説明は「長崎の場合は物が飛んでくる、音が聞こえる、人が流れてくるといったことがあり、PTSDになっていて精神健康に悪影響があるということだ。精神疾患は気分障害、睡眠障害、依存症などがあり、こういう症状に医療費を支給している」ということでしたが、同じことが広島では起こっていないという結論を出す方が不自然で疑問が残りました。
今回の検討会はリモート参加の委員もおられ話しずらかったとは思いますが、忌憚のない意見も出たと思います。国の被爆者援護法について、知らないことがまだまだあって、原爆の被害を受けた方々は想像以上に多いのではないかと感じました。また被爆者の方の死んだ方への補償がなければ黒い雨の解決もないという意見は、あらためて被爆者援護法とは何かという問いが突きつけられ、亡くなった方たちの無念が伝わってくるようでした。
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