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2020年6月

2020年6月23日 (火)

原爆症訴訟二審は一部勝訴。被爆者の救済は誰がするのか。

昨日22日、広島高裁で原爆症訴訟の判決が出ました。この裁判は被爆者が心筋梗塞などの病気で原爆症申請をしたのに国が原爆症と認定しないのは不当であるとして却下処分の取り消しなどを求め被爆者が訴えたものです。原爆症の認定は原爆の影響により病気となった被爆者に対し、国が定めた特定の疾患に対して医療特別手当を支給する制度です。これまで集団訴訟により国は認定要件を徐々に緩和し、積極的に認定するように行ってきました。しかし同じ病気でも原爆症と認められる被爆者と認められない被爆者がいるため、このような訴訟をおこしたのです。

新聞によると今回の訴訟は「病気が放射線に起因するか」「医療が必要な状態と認められるか」が争点だったようです。5人を却下処分の取り消し(勝訴)、6人の請求を退ける(敗訴)という結果になりました。6人の敗訴理由は『「発症に影響を与える程度の放射能に被爆したといえるか疑問。喫煙などの発症した可能性を合理的に否定することはできない」6月23日中国新聞』ということでした。弁護団は『「発症のメカニズムが分かっていない中、喫煙など他の原因を重視しすぎている」6月23日中国新聞』と強く憤っていたようです。

国が基準としている特定疾患は、悪性腫瘍、白血病、副甲状腺機能亢進症、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変、放射線白内障などです。被爆者はこうした疾患にかかると原爆症認定されやすいので申請しますが、実際はどんな病気でも申請することは可能です。そしてこれらの病気に罹ったからといって申請した被爆者が全員、原爆症認定されるわけではないのです。つまり国が定める基準というのは非常に分かりにくいのです。

私は過去数回、原爆症認定申請のお手伝いをしたことがあります。在韓被爆者や在日コリアンの方々ばかりでしたが、いずれもいわゆる国が認定した特定疾患にかかる前に多くの病気にかかっていました。被爆者は常に病気と共に生きていました。そして大病を罹ったのです。ほとんどの被爆者は大病に罹らなくても病気と闘っています。以前にも書きましたが、例えすぐ病気が発症しなくても数十年後になって出てくるということも稀ではないのです。「被爆者は体に爆弾を抱えているようなものだ」という言葉を聞いたことがあります。私もそう思います。今回の訴訟で「病気が放射線に起因しない」という判断を裁判長が下すのはやはり無理があるのではないかと思います。

敗訴した被爆者は上告を検討しているようですが、高齢で大病を患っている被爆者が長期の裁判に耐えられるのか非常に心配です。被爆者を救済する目的の制度のために被爆者が苦しめられているというのはどう考えてもおかしなことです。

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2020年6月14日 (日)

コロナ禍で被爆75周年の平和記念式典が変わるようです

昨年12月から新型コロナウイルス感染症は世界中で猛威をふるい、今だ収束のめどがたっていません。日本でも4月に緊急事態宣言があり自粛要請がありました。このコロナ禍で様々な行事が中止や延期になっていますが、被爆75周年を迎える今年8月6日の式典も様変わりしそうです。広島では8月6日当日、市内各地で様々な団体による慰霊祭が開催されていますが、縮小や中止などの決断が余儀なくされているようです。そして世界から参列する「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」も大きく形を変えることが分かりました。

 

広島市のHPによると式次第や所要時間は例年と変わらず8時から850分の予定のようですが、会場の様子が大きく変わります。ソーシャルディスタンスを守る形にするため一般席を設けず、公園内への入場規制もあるようです。式典参列者の席は例年の1割ほどの最大880席で、公園内の混雑した光景もなくなります。これがどういう感じになるのか想像しにくいというのが正直な思いです。

招待客は内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、外務大臣、 厚生労働大臣で、海外からは国際連合事務総長、駐日大使などが候補に挙がっています。被爆者や被爆者遺族は被爆者 6 団体から推薦された方や被爆者代表、遺族代表、都道府県遺族代表などが挙げられています。去る6月5日には国連のグレテス事務総長が参列する意向を示し、訪問ができない場合もビデオメッセージを送るということが広島市から発表されました。他の国の来賓の方々はまだ分かっていません。このまま新型コロナ感染症が収束しなければ、他国の来賓者の参列は難しいと思います。ビデオメッセージに意味がないとはいいませんし、やむを得ないかもしれませんが、被爆地に来て放つ言葉の重み、献花はやはり特別な意味を持つと思います。

 

また平和宣言の内容も変わるかもしれません。平和宣言の文案を検討する懇談会委員の間でコロナ禍についての言及があったようです。6月6日の中国新聞によると、懇談会委員から「新型コロナウイルスは自然の脅威だが、核兵器は人間の作った脅威で自らの意志で除けると訴えるべき」「感染拡大で自国第一主義が広がっていることへの警鐘が必要」といった意見が出たといいます。コロナ禍という世界が直面している脅威と核兵器廃絶は命を救うために各国が協力しあわなければいけないものです。懇談会委員の方の言う通り、核兵器は人間が自らの意志で排除できます。今は新型コロナウイルスですが、新たなウイルスが出てくる可能性も予想されています。人類は核兵器という無駄なものに時間もお金も労力も費やす暇はないのです。コロナ禍は核兵器社会にとって一つの分岐点になるかもしれません。

 

平和記念式典は海外の来賓にとっては非核平和の意思表示であり、被爆者や遺族にとってはお葬式の意味を持っています。一般の参加者は被爆地に来て核兵器のおぞましさを体感できる機会となります。今年は新型コロナウイルス感染拡大予防のため仕方ありませんが、参列者の限定はとても残念です。平和宣言は世界の核兵器廃絶が大前提です。それを踏まえて、その時々の世界情勢下で平和の真の意味を唱えることが未来の来るべき惨禍に対して重要なメッセージとなるはずです。世界中の人々の価値観が変わりつつあるコロナ禍において、松井市長には反戦を謳い核兵器廃絶が一刻も早く行われなければいけないことを、具体的に力強い言葉で世界に訴えていただけるよう願っています。

 

 

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