ドキュメンタリー映画『ブラジルに生きるヒバクシャ』を見て
広島と長崎の原爆被爆者は世界各国にいます。被爆者の大多数は日本で暮らしていますが、海外では2000人以上いる韓国が一番多く、その後に北米、南米が続きます。南北アメリカは移民政策で日本から渡っていった日本人たちです。ブラジルには100人以上の被爆者がいますが、ほとんどが日本人です。このドキュメンタリー映画『ブラジルに生きるヒバクシャ(ロベルト・フェルナンデス監督2014年日本公開)』はブラジルで被爆者運動をされている森田隆さんを中心にしたブラジル被爆者平和協会の活動をドキュメントしたものです。
映像は広島に原爆が落とされた場面から始まります。森田隆さんはあの日、ご自身が経験されたことを淡々と語ります。私たちは固唾をのんで何が人々の身に起こったのかを知るのです。
外国にいるため日本の被爆者援護法から取り残されたブラジルの被爆者たち。森田さんは中心となってブラジル被爆者平和協会を作り、日本政府からの支援を勝ちとります。そして学校や地域を回り原爆の恐ろしさ、核廃絶、戦争反対を訴え、自分たちのような被爆者を2度と生み出してはいけないと訴えます。
80歳をゆうに越えた森田さんの活動はとてもアクティブで、目で追うのが大変なほど各地に出かけていきます。時には大勢の前で、時には少ない人数の前で森田さんたちは話します。話して話して、ひたすら訴え続けます。どの人も真剣な表情で聞き入る姿は、森田さんたちの気持ちが確実に伝わっている証拠です。ブラジル国内はもとよりアメリカなどにも呼ばれている映像があり、森田さんたちの訴えが広がり始めていることが分かります。また森田さんたちはブラジルで起きたセシウム137事故の被害者を尋ね、共に活動することを約束します。森田さんたちの活動がセシウム137事故被害者たちの力にもなっているのです。
本作品は海外でゼロから被爆者運動を始めた森田さんたちの貴重な歴史を教えてくれるものであり、日本から移民していった日系ブラジル人1世の生き様を伝えてくれる大切な記録です。私たちは知らなければいけない歴史がまだまだあります。
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