「忘れられた皇軍」を見て
「日本人よ、これでいいのだろうか」。映像から流れるナレーションは大島渚監督の叫びでした。大島監督の日本人への怒りが直球で投げられたものでした。
先日、テレビで『反骨のドキュメンタリスト~大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃』が放送されました。番組内では1963年に放送された『忘れられた皇軍』が流され、当時の内容の全てを見ることができました。作品は当時、外国人ということで日本政府から何も保障がなかった在日コリアンの軍人・軍属たちの補償を訴えるものです。画面には目や手足を失っていたり、体に傷のある元兵士たちの姿が電車や路上などに衝撃的な光景となって映し出されていました。強烈なナレーションや音楽とともに悔しさや怒りが伝わってきました。
戦時中に日本軍の兵士として日本人と共に闘った朝鮮半島の方々は敗戦後に戦犯として裁かれました。日本人と同様に罪を償ったのです。戦後、日本人元兵士や軍属などの方たちは戦傷病者戦没者遺族等援護法により日本政府から補償を受けましたが、朝鮮半島などの方々は同様の補償を受けられませんでした。外国人であるという理由からです。手足を失くし、大きな傷を負った元兵士たちが生活の糧をえるためには物乞いをしなければいけませんでした。戦後しばらくの間、傷痍軍人として都会のあちこちにいましたが、通り過ぎる人達の中でその方たちが朝鮮半島の方であることや、日本政府から補償を受けられない方であることを知っている人がどれくらいいたのでしょうか。私自身、広島に来るまで知りませんでした。
在韓被爆者の方たちも同様です。同じ被爆者でありながら外国に住んでいるというだけで、長い間、日本政府からの支援が受けられませんでしたが、そのことを知っている日本人はどれくらいいたでしょう。同番組を見終わっても、いたたまれなさと、ザワツキが収まらなかったのは、在外被爆者などに対する日本人の対応と共通するものがあると感じたからです。「50年間、何をやってきたのか、日本人よ」という問いを、再び大島監督から投げかけられたように感じました。
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