原爆投下をめぐる論文を読んで
原爆投下の理由について、ある論文を読みました。広島市立大学博士課程の繁沢敦子氏が米国の資料を使って書いた『錯綜するアメリカの公式見解―米軍における「もう一つの戦争」とスティムソン論文の誕生―』です。これは「原爆投下によって戦争終結を早めた」というヘンリー・スティムソン論文と異なる見解について研究したものです。
ヘンリー・スティムソンは第二次世界大戦中、陸軍長官で、原爆投下に関して影響を与えた人物の一人として知られています。そのスティムソンが1947年に出した論文から「原爆によって日本本土への上陸作戦は必要なくなり、結果として百万人の米兵を救った」というものが米国の公式見解とされているということでした。しかし修正主義者と言われる人々は「原爆はソ連に対する牽制」と提唱しており、この2つの見解が今も継続して議論されているのだそうです。
2つの議論が結論に達しない理由は日本の降伏要因だといいます。原爆か、それとも上陸作戦が実施されていた場合に予測された結末だったのかといった原爆の役割をめぐり、米軍再編の行方が決まると考えられていたためのようです。つまり米軍内での陸海軍それぞれの存在感をかけての攻防戦といった様相のようです。
日本の降伏をめぐっては米国内で様々な情報が公表されていたようで、早くは1945年8月のニューヨークタイムズに、国務長官の言葉として原爆が敗戦理由ではないことが掲載されているということです。スティムソン論文は2年後ですから数年にわたって軍内部のつばぜりあいが続いていたことが見て取れます。
このような状況を知ると、米国が原爆投下に対して非人道兵器を使ったという自覚を持つということではなく、正当化することに躍起になっていたのではないかと想像してしまいます。もし原爆投下を被害の立場から評価していたのなら、核兵器が存在することの禍害が見えたのではないかと思いました。
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