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2010年7月13日 (火)

原爆投下後の被爆報道から見えてくるアメリカのジャーナリズム 『原爆と検閲 アメリカ人記者たちが見た広島・長崎』繁沢敦子著

 広島に来て知った言葉に「プレスコード」があります。GHQがマスコミなどの情報を検閲・統制し、連合軍や占領軍にとって不利な情報を流さないようにするためのものです。このプレスコードが原爆の被害の実相が日本国内はもとより海外に伝わらなかった大きな要因だといわれていました。だからといってヒロシマにジャーナリストたちが入って来ていなかったのかというとそうではなかったようです。むしろ優秀な欧米のジャーナリストが数多く、被爆地に来ていたといいます。しかし原爆の実相は伝わっていませんでした。なぜなのか。戦後すぐヒロシマ・ナガサキに入った欧米のジャーナリストが被爆地で何を見てどう伝えたのか、ジャーナリストである著書が戦後直後のアメリカの被爆報道を通してジャーナリズムとは何かを問いかけています。

本書は「序章 被爆地へ向かった三人」から始まり、「終章 被爆地を見た記者たちのその後」の全8章から構成されています。序章では8月下旬から9月上旬に被爆地に入ったジャーナリストの状況と第一報の内容が書かれています。そこには広島を故郷に持つ日系人も登場します。スクープを狙う記者たちはその惨状について衝撃をもって伝えましたが、本国では書いた通りには報道されませんでした。削除や修正などが図られていたのです。第一章から六章まではどのメディアがどのように取材し、どんな記事を書き、書いた原稿がどう扱われたかが詳細に書かれています。さらに第二次世界大戦時の米国の検閲制度を取り上げ、検閲機関と報道との関係まで掘り下げています。終章の記者たちのその後では、被爆地での体験をどう受けとめながらジャーナリストとして生きたかをとりあげています。

本を読んで私がまず驚いたのは、一流のジャーナリストの関心が原爆の破壊力にあり、人的被害には関心を持っていなかったということです。被害者の存在が頭になかったことに衝撃を受けました。しかし実際に被爆の惨状を目の当たりにして戸惑いながら書いた記事に‘世界への警告’という言葉を使っていたことに救いを感じました。また被爆地に入ったジャーナリストたちのほとんどが被爆について戦後、積極的に語ろうとしなかったことにも興味を持ちました。著書は「彼らは振り返ろうとしなかったのだ。」と表現しました。彼らが知った原爆の真実とは何だったのか、どう思っていたのか知りたいと思いました。

私自身は原爆のことを知れば知るほど複雑で分からなくなり、得体のしれない恐ろしさを感じます。今も核や被爆についてマスコミは伝えていますが、日本のジャーナリストは事実をどう伝えているのでしょうか。本書を読んで、受け取る私たちは報道の意味について、そしてそこに何が隠れているのか、しっかりと看視しなければならないと改めて思いました。

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