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2008年11月24日 (月)

小雪が変えようとした世界『新・自虐の詩 ロボット小雪』

 わりとマンガが好きで評判になったものや好きな作家の作品は読むようにしています。新聞などで話題になっていた業田良家著『新・自虐の詩 ロボット小雪』を読みました。業田良家さんの『自虐の詩』は映画化以前に読んでいて、4コママンガであることを感じさせないドラマチックな展開と優しい愛情物語に好きな作品の一つでした。映画はあまりにも私のイメージとかけ離れたキャスティングだったので見ませんでした。映画同様前作以上の物語を期待するのは難しいと思いながら『新・自虐の詩 ロボット小雪』を読んだのですが、とても強烈な内容でした。前作と同じく主人公の純粋さと素直さに心を掴まれました。と同時に社会に対する業田良家さんの視点に姿勢を正されました。
 『新・自虐の詩 ロボット小雪』は近未来が舞台で、学生までが株式でお金儲けをして、人間型ロボットを恋人や愛人にしているような世界です。主人公の小雪は高校生の拓郎が購入したロボット。この小雪がいつのまにか心を持つお話しです。ファンタジックな内容に思えますが、世界観は殺伐としています。家族はバラバラ、株式や仕事で1度でも失敗しようものなら生活は一気に転落。“向こう岸”と呼ばれる貧民地域に行かされます。貧民地域では仕事がなく、生活はすさむばかり。そもそもこの地域に1度入ったら、抜け出すことはまず無理です。死んでも遺体から燃料になる原料を搾り取られるような世界が広がっているのです。
 収奪することだけしか考えていない、今だけの富を求める刹那的な人間の欲望から起きる格差社会。小雪の変化は周囲を見渡すことから始まりました。ほんの些細なことに気づくこと。なぜなのか考えること。そして小雪はこの格差社会を変えようと行動を起こします。物語が進むに連れて、小雪の変えようとした世界は絵空事ではなく、今まさに私たちが生きている社会そのものだということがわかります。そして格差社会を支えているものは“気づこうとしないこと”“変えようとしないこと”にあるということも。「突然心を持ったからまわりの世界に気づいたのです」と言う小雪の言葉に、ロボットは小雪ではなく私たちなのだと気づかされるのです。

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