広島の宝もの
梅雨はちょっと気分もふさぎがちですが、この時期は蛍が飛びかう幽玄な夜が用意されています。先週、蛍を見に瀬野川に行きましたが、数多くの光が舞っている姿にしばし見とれてしまいました。森と清流の香りがする中、人工的ではない光を見ていると心が和みます。この光景は広島の宝だと思いました。今回は広島で見つけた宝についてお話しします。
梅雨の晴れ間を見計らって、久しぶりに韓国人の友人と会いました。彼女はテグ出身で5年ほど前に広島に来ました。ご主人はやはり生まれも育ちも韓国人で、子どもは2人います。彼女は慣れない外国で頑張って幸せな家庭を築いています。彼女の娘さんは今、朝鮮学校の幼稚園に通っています。朝鮮学校は原則、朝鮮語(朝鮮学校では呼び方が朝鮮語になりますが、韓国語と同じです)を使うことになっています。幼稚園も例外ではありませんが、やはりまだ幼い子どもですから、周囲の子どもとは日本語で会話しているので日本語を覚えてくると言います。家庭は韓国語ですからバイリンガルになって羨ましいと思うのですが、友人は「問題は韓国語。日本語のような韓国語を使うのよねえ」と言うのです。幼稚園で使う韓国語はいわゆるネイティブが少ないのではないかと思います。もちろん北朝鮮独特の言い方などもあるとは思いますが、多くは在日コリアンが親から教わったり、後から勉強して習得した言語だと思います。ですから友人曰く「表現が日本語的」になっているそうです。子どもが家で日本語的な韓国語を使うので、その都度、直していると話していました。
自分の民族の言葉なのに、話せないという悲しみを経験したことのない私には想像するしかありませんが、民族学校で高齢の方がハングルを習う姿を見ていると、文化を奪うことがいかに非人道的なことかがわかります。文化の否定は人格の否定に匹敵すると思います。「日本語的な韓国語」を使わざるおえなくなってしまった在日コリアンの方々ですが、まず民族の言葉を取り戻すことは本来の自分を取り戻していくような感覚なのではないでしょうか。日本語式の韓国語でも在日コリアンの方々にとって言葉は宝物なのだと思います。
また友人の子どものようにニューカマーの子どもたちがこれから日本でどう育っていくのかと思うと楽しみです。「私の友人はみんな韓国人ばかりで日本人はオンニ(お姉さん)ぐらいしかいないの」という彼女の状況は、ニューカマーのコミュニティの中にいるということですから、母国を忘れずに暮らせることにもなります。その子どもは日本に暮らしながら、韓国人社会で育つのでオールドタイマーの子孫の在日コリアンと似ていますが、決定的に違うのは最初から周囲に名前も堂々と名乗れるし、韓国文化も語れることです。むしろ積極的に韓国文化を伝えることができます。こうした子どもたちは在日コリアンの方々にとっても頼もしい存在になるでしょう。友人の子どもたちは在日コリアンのことも理解できるし、日本のことも韓国のことも理解できる、両国にとってかけがえのない宝になるに違いありませんし、そうなることを祈っています。
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